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スピーチ概要(応募時の概要を原文のまま掲載)

折紙と日本人
グェン・ビェット・フン
私は折紙が大好きです。折紙は日本人の気質(きしつ)と共通(きょうつう)するところがあると思います。それは、小さな部分(ぶぶん)にまで細(こま)かく、最後まで気(き)を抜(ぬ)かず、落ち着いて何度も練習を重(かさ)ねるような粘(ねば)り強(づよ)さがあるところです。

私が初(はじ)めて折紙を覚(おぼ)えたのは、小学生のときでした。図工の授業(じゅぎょう)で、鶴(つる)や蛙(かえる)や舟(ふね)などを習(なら)いました。日本の皆(みな)さんは驚(おどろ)かれるかもしれませんが、ベトナムでは小学校で、折紙を習(なら)うのです。日本の伝統文化(でんとうぶんか)の一つである折紙ですが、当時(とうじ)の私はそんなことはまったく知りませんでした。

中学2年生のある日、図書館に行った私は、偶然(ぐうぜん)、近代折紙の本を見つけました。その本を見た瞬間とても驚(おどろ)きました。なぜなら、それまで知っていた簡単(かんたん)な折紙とは全然違(ぜんぜんちが)い、近代折紙は、一枚(まい)の紙からいくつもの複雑(ふくざつ)な工程(こうてい)を経(へ)て、本物(ほんもの)そっくりの動物や物を作(つく)り出(だ)すものだったからです。

その折紙の世界に魅了(みりょう)されていくうちに、折紙が千年も昔(むかし)から続(つづ)く日本の伝統文化(でんとうぶんか)だったことを知りました。しかし、私が初(はじ)めて見たその本は、実(じつ)はフランスの人が書いたものでした。本の中には、フランスの折紙作家(さっか)が考(かんが)えたモデルの他(ほか)に、アメリカ、ベトナムの作家(さっか)が考(かんが)えたモデルも載(の)っていました。折紙は、世界中の人に親(した)しまれ、新(あたら)しいモデルが生(う)まれています。つまり、もともと日本のものだったのが、今は世界のものになっているのです。

私はその本を参考(さんこう)にして、載(の)っているモデルを全部折(ぜんぶお)ってしまうくらい夢中になりました。ひとつのものを100回以上(いじょう)折ったこともあり、どんなに難(むずか)しくても、本を見ないで折ることができるようになりました。以前(いぜん)は、ただの子どもの図工だと思われていた折紙ですが、近代折紙は、紙から作り出す芸術(げいじゅつ)です。その繊細(せんさい)さにうっとりするくらいです。折紙を折るとき、私は細心(さいしん)の注意(ちゅうい)を払(はら)うことと、粘(ねば)り強(づよ)くがんばることを学びました。折紙を折ることは、建物(たてもの)を建(た)てるのと同じです。ひとつでも不安定(ふあんてい)な煉瓦(れんが)があれば、建物(たてもの)は崩壊(ほうかい)します。折紙も同じで、ひとつ正確(せいかく)でない折(お)り目(め)があると、他(ほか)の折(お)り目(め)に影響(えいきょう)し、美(うつく)しい形(かたち)になりません。そんな折紙を考(かんが)え出(だ)した日本人は、とても器用(きよう)なのだと感心(かんしん)します。

ところで、日本にはソニーやパナソニックなど、性能(せいのう)が良(よ)く、有名(ゆうめい)で優(すぐ)れた製品(せいひん)があります。それは、日本人に折紙と同(おな)じような細(こま)かい部分(ぶぶん)の正確(せいかく)さや、いい製品(せいひん)を作(つく)るまで試行錯誤(しこうさくご)を繰(く)り返(かえ)す粘(ねば)り強(づよ)さがあったからだと思います。「モノづくり大国日本」の異名(いみょう)を世界に知らしめた日本の「モノづくり」の原点はこの折紙の精神(せいしん)に由来(ゆらい)しているのではないでしょうか。

折紙を通して、日本と日本人について少し理解(りかい)できたと思います。
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