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最優秀作品【中学生作文コンテスト】(2010年度)

〜最優秀賞(県知事賞)〜
「もしも私が国連職員なら」
野田学園中学・高等学校三年 山本 将太郎(やまもと しょうたろう)さん
 「よし、みんなで運ぼうぜ!」
 僕のかけ声で。クラスのみんなが一斉に机を運び始めた。中国に届けるために・・・。
 二〇〇八年五月十二日、中国四川省で大きな地震が起きた。被災地の崩壊した学校の再建の手助けを少しでもできたらと、僕たちの野田学園では、旧校舎で使用していた生徒用の机と椅子約六百組を四川省へ寄贈することとなった。しかし、送るためには輸送費が必要だ。それも自分たちで捻出しなければならなかった。僕たち生徒会は、その費用を集めるために募金をすることにした。朝早くから、募金箱をかかえて正門の前で懸命に呼びかけた。正直きついと思う時もあったが、それ以上に「中国の学校に机を届けるんだ!」という強い使命感が僕たちを突き動かしていた。
 机をはこぶ。思いをはこぶ。中国の被災地のもとへ・・・。届けるのは机だけじゃない。僕らみんなの熱い思い。中国の人々への思い。そして、平和への願い。
 僕たちは日本人だけど、それと同時に『地球人』なのだ。遠い外国で起こった不運な事故のニュースを聞いて胸を痛める。外国の深刻な環境問題を知って「何とかしないと」と思う。それこそが、僕たちが『地球人』である証だ。国が違うとか、肌の色が違うとか、そんなことは関係なく、同じ地球人の誰かがどこかで困っていたら助けになりたいと願う、その気持ちこそが、僕たちが踏み出せる平和への第一歩なのではないだろうか。
 僕はまた、小学6年生の時、『日中韓交流プログラム』というプロジェクトにも参加することができた。それは、日本、中国、韓国から、総勢百人もの小学生が集い、一週間ともにキャンプをしながら交流を深めようというプロジェクトだった。はじめは、言葉が通じず伝えたいことが上手く伝わらないもどかしさに苦しんだが、協力してご飯を作ったりテントを建てたりするうちに、アイコンタクトや表情、仕草で、少しずつコミュニケーションがとれるようになった。そして、僕はすぐに彼らと友だちになった。中国人であろうと韓国人であろうと、彼らは僕の大切な友だちだった。友だちの笑顔を見れば僕も笑顔になれたし、友だちが悲しそうな顔をしているのを見れば何とかして元気づけたいと思った。相手の気持ちをくみ取り思いやる心には、国境なんかない。それが、彼らと過ごした一週間で僕が体感したことだった。
 僕は、日中韓プログラムと被災地に机を送るという二つの出来事を通して、僕たちはみんな『地球人』なんだ、仲間なんだと、頭だけでなく心で理解することができた。
 やはり人は、頭でどんな理想論を唱えても心で納得できなければ理解できない。それは戦争で分かることだ。「戦争は悪いことだ。」そんなこと、だれだって知っている。それでも、今もまだ、世界の各地で内戦や紛争は絶えない。イラク戦争も、毎年数え切れないほど多くの犠牲者を生み出しながら続いている。人の力で防ぐことができない自然災害で全てを失うことにあれほど世界中の人々が心を痛めているのに、なぜ人はその脅威を自ら作り出しているのか。どうして、争いはいつまでたってもこの世界からなくならないのか。人間は無意識に自分と違うものを排除しようとするのだろうか。
 世界中の人々が、国籍が違う人も肌の色や言語、宗教が違う人もみんな同じ『地球人』であるのだと心で納得できた時、この世界から争いは消えるのだと思う。
 だからもし僕が国連職員になったら、国際交流プロジェクトをたくさん実施して多くの子どもたちが僕と同じような経験をする機会を作りたいと思う。一人でも多くの子どもたちが、自分達が『地球人』だと感じてほしい。みんな仲間なんだと心で納得してほしい。それが僕の願いだ。
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