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最優秀作品【高校生による海外体験感想文コンテスト】(2009年度)

〜最優秀賞(県知事賞)〜
「世界中にある宝」
下関中等教育学校五回生 網本 侑理(あみもと ゆうり)さん
 夏休みに三日間、韓国にホームステイをした。事前にホストシスターであるジウンから、ホストマザーは料理人で、凄く料理が上手なことを聞いていたので、おいしい物に目がない私は浮き浮きしながら韓国への入国ゲートを潜った。ジウンに出迎えられ、街中の色々な所に案内された後、遂に楽しみにしていた夕食の時間になった。ジウンが家の扉を開けるとおいしそうな夕食の香りが漂ってきた。
 そこには広い食卓が狭く見えるほど沢山の小皿が並べてあった。どこから箸をつけるものかと呆然として眺めていると「ここからここまで全部キムチよ。」とジウンのお母さんが教えてくれた。その言葉に私は更に驚いた。キムチが十皿以上もあったのだ。一つずつ説明をしてくれたが何しろ数が多くて覚えられなかった。私は、もやしのキムチが一番おいしい、と思って専らそれを食べていた。そればかりを食べていたのに全然皿が空かないので不思議に思っていたら、ジウンが「韓国では小皿はおかわり自由なんだよ。」と少なくなった皿に料理を補充しながら教えてくれた。お客さんのおなかが一杯になるまで食事を出す、というのが韓国流のもてなしだそうだ。
 食後、お母さんは本当に料理が上手だとジウンに伝えると、彼女は笑って自分も作れるよ、と言った。私は感心し、同時に自分が作れる和食のレパートリーの少なさに情けなくなって「今度は私が和食を作るから、絶対に日本に来てね。」と冗談で言った。すると、彼女は目を輝かせて喜んでくれた。聞くと彼女は料理が好きで和食にも興味があるらしかった。私は密かに、家に帰ったら早速料理の特訓をしなければ、と考えていた。
 以前、現代文の教科書に、アメリカ国民は、可哀想な国民だと書いてあった文が印象に残っている。その一文は、何処に行ってもマクドナルドがある為に外国へ行っても自国と変わらない風景を見ることになり、食事もまた然りで、旅行に行っても興ざめだ、という内容だったと思う。成る程、確かにその通りだと思った。もし自国での食事が何処でも気軽に取れるならば安心して旅行を楽しめると考える人は少なくはないだろう。だが、それは同時に異国の風変わりな食事や景色を楽しむチャンスを私達から奪いはしないだろうか。私ならば、そうなってしまったら海外へ旅する醍醐味は何なのだろうかと考え込んでしまうに違いない。食には個人の嗜好だけでなく土地柄や文化、歴史といった様々な要素が融け込んでいる。だからこそ私は世界各地のありとあらゆる民族の伝統食は、まさに人類の守られ受け継がれるべき大切な宝だと思っている。
 現在、私は祖母から和食の作り方を学んでいる。和食は素材がシンプルなだけに味のごまかしがきかない。それ故、私は作った料理を食べる度に自分の腕の未熟さを痛感させられる。せめて彼女が今度来日する時までに、これが日本の味だと胸を張って食べさせてあげられる位に上達したいものだ。さらに、料理の特訓をするうちに、私は食を通してもっと多くの国の人と交流を持ちたいと思うようになった。和食から日本の良さや、そこに宿る日本人の精神を感じ取って貰えたら嬉しいし、食を通して世界を知りたいと思うのだ。例えば、食のもてなしから私が韓国人のきめ細やかな思いやりの精神を感じたように、淡泊で素朴な日本料理から、全ての素材を活かし互いを引き立てようとする日本人の和の精神を感じ取って貰いたい。そして私もそのような料理を作れるようになりたいと思う。そうやって様々な国の人と互いの国の暮らしに思いを馳せて、文化の違いを受け入れあえたら、どんなに楽しいだろうか。
 私の想像はどんどん広がっていって一つの目標が出来た。それは料理の腕を上げた後に、世界中の食を巡る旅をする事だ。和食を色々な地域の人に楽しんでもらいたいし、色々な地域の伝統料理を味わい、身につけていきたいと思う。祖母にそう話すと、彼女は武者修行のようだと言ってクスクス笑った。
 まずはジウンに美味しい、と言ってもらえる位に料理の腕を上げることが現前の目標だ。伝統料理とはその地域や国の精神を反映するものだと思うからこそ手は抜けない。着実に努力して奥の深い食≠極め、そうすることで私なりに国際交流に貢献していきたい。
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